私はbull、ox、cowの違いが長年よくわかりませんでした。

3つともすべて牛を表す英単語であることは知っていたのですが、cow=白と黒が特徴的なホルスタイン牛、bull=闘牛に出てくるような牛、ow=その他の牛、といった感じで適当な認識しか持っていなかったです。

これらの英単語について、正しくは牛の品種ではなく性別で定義付けされています。

今回は牛に関する英単語の違い、そして性別や、親子、食用肉で名前が変わる動物の英語名などをまとめてみました。

(※本記事には広告が含まれております。)

英単語 bull, ox, cowそれぞれの意味と違い

最初にbull、cow、ox、それぞれの単語の意味を英英辞典で見てみましょう。

bull noun

1 [C] the male of any animal in the cow family.
(2以下略)

※nounは名詞、[C]はcountable noun=可算名詞(数えられる名詞)を表しています。

cow noun

1 a large animal kept on farms to produce milk or beef.
(2 以下略)

ox noun (pl. oxen)

1 a BULL (=a male cow) that has been CASTRATED (= had part of its sex organs removed), used, used, especially in the past, for pulling farm equipment, etc.
(2以下略)

※pl.はplural(複数、複数形)の省略。 Oxという単語の複数形はoxenという意味です。

castrateは、”動物のオス、人間の男性を去勢する”という意味を持つ他動詞です。 (動物のメスの場合には、castrateではなくspayという単語が使われます。)

オス牛の場合、去勢されているか否かで英語名が変わるのが面白いなぁと思います。

Bullは翼を授ける某エナジードリンクの商品名にも使用されていますが、闘牛のように荒々しくて活発的なイメージが元気の出るエナジードリンクと合ったのかもしれませんね。

名称がbullからoxへと変わる理由

一方のoxは、去勢済みのオス牛を指します。

私の好きな漫画『銀の匙』の作中に、「オスはタマを取らないと肉が柔らかくならない」という農業高校の先生のセリフがあります。

テストステロンというホルモンの分泌源である精巣を取り除くことで筋肉の増大を抑制するみたいです。

畜産に関する知識を全く知らなかった私は、「家畜の肉質を柔らかくする為にこんな過程があったとは!」と衝撃を受けました……

ちなみに、この去勢は牛だけでなく、豚、一部の鶏、羊(生後1年以上を経て出荷されるホゲットやマトン)など、他の食用の動物にも行われているそうです。

話を牛に戻しますと、厳密に言えば去勢されたオス牛を指す英単語が二つ存在します。

前述のoxは農耕去勢牛で、食用の去勢牛はsteerと言う別の単語があるそうです。

「農耕用なら去勢は必要ないのでは?」

「むしろ筋肉が発達していた方が農業の役に立つのではないか?」

と思いましたが、去勢にはオス牛の性格を大人しくする作用もあるようなので、そちらが主な目的だったのかもしれません。

しかし、機械技術が発展して様々な農業機械・農機具がある現代では、農耕用に去勢された牛という限定的な意味でoxが使われることは無いみたいです。

牛関連の単語一覧表

(野生ではなく家畜である)牛の総称cattle
オス牛bull
(乳牛、食用の経産牛も含む) メス牛cow
(未経産の) メス牛heifer
(去勢済み、昔は農耕用)のオス牛ox
(去勢済み、食肉用の)オス牛steer *¹
子牛(仔牛)calf *²
和牛wagyu
  黒毛和種Japanese Black
  褐毛和種Japanese Brown
  日本短角種Japanese Shorthorn
  無角和種Japanese Polled
国産牛Japanese domestic beef

*¹動詞で「操縦する」「かじを取る」を意味するsteerと同音異義語です。

*² calfは牛以外の大型の哺乳動物の子どもにも使われます。また、人体のふくらはぎ、腓という意味も持っています。

性別によって名前が異なる動物の英語一覧表

家畜動物である牛以外にも性別によって英語名が変わる動物がいます。

日本語のように雄(牡)・雌(牝)を付け加えるだけだったら簡単で覚えやすいのですが、英語の場合はオスかメスかで単語自体が変わってしまうので難しいですね。

動物名オス♂メス♀
牛 (cattle)bull, ox(去勢されたオス牛)cow
馬 (horse)stallion, gelding(去勢されたオス馬)mare
鹿 (deer)stag, hart(主にアカシカのオス)doe, hind(主にアカシカのメス)
狐 (fox)foxvixen
羊 (sheep)ramewe
豚 (pig)boar *³, hog(去勢されたオス)sow
山羊 (goat)billynanny
鶏 (chicken)rooster, cock(英)hen

*³ 私はboar=猪と覚えていたので、オス豚にも同じ単語が使われると知って驚きました。 猪とオス豚、大抵の場合は文脈から判断できると思うので区別するのに問題は無いと思われます。

もし、猪であることを強調したい時には wild boarのようにwild(野生の)を付け加えると安心です。

黒いマイクロブタの写真

余談になりますが、十二支の「亥」は中国や韓国では猪ではなく豚だそうです!(十二支の考えが生まれた中国では豚が既に家畜化されていた為、豚が当てはめられたと言われています。)

わたし

英語のネイティブスピーカーは日常会話でも動物名をオスかメスかで使い分けしているの?

知識として知っているけど、日常で使うことはあまり無いよ。

実際に使う必要があるのは酪農家や畜産関係の仕事に就いている人、生物学の研究者くらいじゃない?

アメリカ人夫曰く、上記一覧表に記載されている動物であっても、male(オスの)/female(メスの)という形容詞を動物名の前に付ければ問題無いそうです。(ただし、牛や鶏は除きます。)

英語のmaleとfemaleについて

日本語のオス/メスは人間以外の動物の性別を指す言葉ですが、英語のmale/femaleは人間にも適用が可能です。

人間に使用する場合、日本語訳を下記のように変えるのが自然です。

英語名詞の意味形容詞の意味
male男性、男男性の、男の
female女性、女女性の、女の

パスポートの性別欄にも男性であればM(Maleの略)、女性であればF(Femaleの略)が記載されます。

また、恋人の彼氏(boyfriend)や彼女(girlfriend)ではなく、単なる男友だち/女友だちと英語で伝えたい場合は、male friend/female friendと言うことができます。

親子で名前が異なる動物の英語一覧表

(※正式には大人の動物を成体(哺乳類は成獣)、子どもの動物を幼体(幼獣)と言いますが、この記事内では、「おとな/子ども」と記載してします。)

日本語で動物のこどもを表す時、子犬、子猫、子豚など、動物の名前に「子」を付けるだけなのでわかりやすいですよね。

英語の場合、おとなと子どもの名称が動物によって変わる為、少し注意が必要です。

おとな子ども
dog子犬 puppy
cat子猫 kitten*⁴
horse 子馬 foal
(オスの子馬はcolt, メスの子馬はfilly)
鴨/アヒル duck 子ガモ/アヒルの子(ひよこ) duckling
鹿 deer 小鹿 fawn*⁵ (calfも可)
ニワトリ chicken ひよこ chick
sheep子羊
lamb (生後1年以下)
hogget (生後1年~2年)
pig 子豚 piglet*⁶
ヤギ goat 子ヤギ kid*⁷

*⁴ kittenは子猫を意味するけど、kittyは?

子猫を指すkittenに似ている言葉でkittyという英単語があります。おとなの猫、子猫に関わらず、幼児言葉の「にゃんにゃん」や「にゃんこ」と言ったニュアンスです。

日本ではkittyと聞いて、真っ先にサンリオの有名キャラクターであるキティちゃんを思い浮かべる人は私だけではないハズ!

*⁵ 小鹿のfawnはBambiでも通じる!

一般的には小鹿のことをfawnと言いますが、アメリカではBambiと言っても通じるそうです。

ご存知の方も多いディズニー映画の『バンビ』(原題 : Bambi)の主人公である鹿のキャラクター名がBambiなので、その名前が由来になっています。

*⁶ Pigletはディズニーのキャラクター名と同じ

子豚を表す英語 piglet(ピグレット)って聞き覚えがありませんか?はい、くまのプーさんに登場する子豚のキャラクターと同じです。

プーさんに登場するキャラクター名は、オウル、ティガー、カンガとルー、ラビットなど、動物名をそのままのもじった名前が多いなぁとは思っていたのですが、ピグレットも同様でした。

*⁷ Kidは山羊の子ども→人間の子供を指す言葉に変わった?!

「えっ、kidって人間の子供じゃないの?」と驚きますよね! 元々kidは山羊の子どもを指す言葉でしたが、19世紀以降、人間の子供に対しても使われるようになったそうです。

アメリカの場合、kidはカジュアルな日常会話において人間の子供という意味で使われることがほとんどです。

(イギリスではkidという単語はあまり使われていないそうです。代わりにchild、son、daughterを使うのが一般的らしいです。)

その他動物の子どもの名称について

前出の一覧表以外にも特定の動物の子どもを表す英単語があります。

  • cub  
  • クマやライオン、トラ、狼、狐など、主に肉食動物の子ども。

  • calf  
  • 主に子牛を意味する言葉ですが、牛以外にも鹿、象、キリン、カバ、サイ、鯨など、
  • 大型の哺乳動物の子どもという意味でも使われます。

  • pup  
  • 狼などイヌ科の動物はcubの他にpupと言うことも可能です。
  • イヌ科以外にも、アザラシやラッコ、カワウソなどの動物が該当します。

  • joey 
  • カンガルー、コアラ、ワラビー、ウォンバット、オポッサムなど有袋類の動物の子ども。

cub、calf、pup、joeyにも該当しない動物の子どもは?

チンパンジーやゴリラなど霊長類の子どもには、人間と同様にbabyやinfantという英単語を使うのが一般的だそうです。

Babyという単語であれば、どの動物の子どもに対して使っても問題はありませんので、「あの動物の子どもは英語で何て言うんだっけ?」と英単語がすぐに出て来ない場合に便利です!

日本にも動物と食用肉の名前が異なっていた時代があった

ビーフやポークなど、いずれも馴染みが有り過ぎて疑問にすら思わなかったのですが、家畜である動物の英語名とお肉になった後の名前が全く別ですよね。

現代の日本語では、牛は牛肉、豚は豚肉、鳥は鶏肉と言った感じで、動物の名前の後ろに肉という単語を付け足すだけで良いので非常にわかりやすいです。

しかし、実は日本にも動物と食用肉が異なる名称で呼ばれていた時期がありました。「さくら」や「ぼたん」と聞けばピンと来る人も多いのではないかと思います。

日本では殺生を禁ずる仏教の影響や江戸時代に制定された生類憐れみの令により、食肉が禁忌とされる時代が長く続いていました。

明治時代以降に食肉が解禁されましたが、それよりも前の時代から一部の人々は密かにお肉を食べていたそうです。

上級階級の人たちは薬と称して、また一般庶民の間でも別の呼び名(隠語)を使い、表向きには食肉ではないように見せかけていたようです。

その当時に使用されていた隠語が、現在でも「桜鍋」や「牡丹鍋」などの料理名に残っていますね。

  • さくら = 馬肉
  • ぼたん(または山くじら) = 猪肉
  • もみじ = 鹿肉
  • かしわ = 鶏肉

熊本の居酒屋で食べたさくら納豆の写真
熊本名物の一つ、さくら納豆

家畜動物と食用肉の英語一覧表

日本で動物とお肉の名前が異なっていた時代があったのは、食肉が禁じられていたという時代背景が理由でした。

一方、なぜ英語では家畜である動物とそのお肉が全く異なる名称なのでしょうか?

調べてみると、明治時代前の日本のような隠語を使っていた訳ではなく、言語そのものが異なっていたことがわかりました。

英語の動物名英語の食用肉名古フランス語の動物名現代フランス語の動物名
ox / cowbeefbuefbœuf
calfvealveelveau
pigporkporcporc (古フランス語と同じ)
sheepmutton
(生後2年以上の羊肉)
motonmouton
deervenisonvenesoun
(動物の鹿ではなく、大型狩猟動物の肉を意味する)
venaison
(古フランス語と同様、鹿肉や猪肉などを指す)

※フランス語の単語には男性形と女性形があるのですが、ここでは古英語に影響を与えたと思われる方を記載しています。

イギリス(アングロサクソン人)は11世紀中頃から約300年間、フランス(ノルマン人)に征服されていた歴史(ノルマンコンクエスト)があります。

この時代に言語や文化に大きな影響を受けており、そのことが上記の食用肉の名称に繋がってくる訳です。

支配される側であったアングロサクソン人が家畜を育て、調理をする。支配する側であるグルメなノルマン人がそのお肉を食べる。

その為、動物(家畜)を表す言葉は英語そのままで、お肉になった後の言葉はフランス語由来となったようです。

家畜である動物とお肉になった後の名前が英語では異なる理由は、イギリス(アングロサクソン人)がノルマン人に支配されていた時代があったからなのですね。

Chickenは例外

英語のbeef、pork、mutton、venison、いずれの言葉も古フランス語に似ていますが、chickenは例外です。

チキン(chicken)と聞くと、私たち日本人は鶏肉を真っ先に思い浮かべるかと思いますが、英語では家畜である動物の鶏、そして鶏肉の両方を指す言葉でもあります。

ノルマン人の征服下にあった時代、アングロサクソン人は牛肉や豚肉を食べられず、鶏を育てて食べていた為chickenは鶏と鶏肉の両方を意味する言葉のまま現在に至ったようです。

(イギリスでは牛や豚は元々食べられていなかったという説もあるらしいです。)

(余談) 外来語のジビエはフランス語(gibier)が由来

現在、日本では猪肉や鹿肉など狩猟によって捕獲された動物のお肉を「ジビエ」と呼ぶことが一般化しています。

ジビエは外来語であり、狩猟鳥獣・狩猟鳥獣の肉を意味するフランス語のgibierという単語から来ています。

残念ながらジビエでは英語話者には通じません。 英語では”game meat“と言います。

「えっ、なんでゲームのお肉なの?」と思いますよね?

イギリスでは上流貴族がスポーツとして狩猟を行っていた時代があり、狩猟=娯楽の一つだったからだそうです。

日本で言うところの、江戸時代の鷹狩りみたいな感じでしょうか?

まとめ

今回は、bull, cow, oxそれぞれの違い、性別や親子によって名前が変わる動物や、畜産動物と食用肉の名前が異なる理由など動物関連の英語情報を詰め込んでみましたが、いかがでしたか?

日常英会話では使う事が無いと思いますが、英語の動物ドキュメンタリー番組などがお好きな方は耳にする機会があるかもしれません。

英単語のbeefやporkなどが古フランス語の影響を受けているように、ノルマンコンクエスト時代にフランス語からの借用語として英語になった言葉は数多くあります。

フランス語やラテン語が由来となっている言葉は現代英語の約50~60%だとか。

言語学の分類上、英語と同じゲルマン語派に属するドイツ語よりも割合が高いのには驚きです。

ドイツ語由来のカタカナ語(外来語)に興味がある方はこちらの記事もどうぞ♪